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ある日のなか志まやの出来事、つれづれ

2010年08月の店主日記
[過去の店主日記一覧]
●2010年08月19日(木)

仁平と白洲

仁平幸春さんにお願いした第一弾。
天然染料/茜、矢車附子の鉄媒染です。ひとつとして同じ表情を見せない生地。
端から端まで手が掛かったロウムラは全く見飽きる事なく、浮き沈みする抽象的な地紋が、まるでとてつもなく長い年月を経たような古代の壁画のようにさえ見える。

先染めの絹織物を、自分の着物の軸として来てもう随分となるが、先染め同様に、後染めにも生地に奥行きが感じられることをいつも念頭に置いている。画像はいつも私の素人写真で、ライティングもかなりいい加減なものだから、この着尺の『妙』の30%も伝えられないけどれど、いままで作った織り無地と同じ、いやそれ以上に深みのある着物が出来上がった。


合わせたい帯は、仁平氏の工房で見つけた。レースの帯である。
想像以上に着物と帯が共鳴して、何か音が聞こえて来るような錯覚さえもする。
同じ作者なのだから当然と言えばそうなのだが、、、
本来ならすぐに持ち帰るところなのだが、ひと呼吸。楽しみをすぐに実現させてしまう前に店にある帯を乗せてみる。

白州正子さんが、昔、洛風林に発注した太子間道の復刻版。
二重経の手織九寸名古屋帯。
勿論、なか志まやのオリジナル紬/箔の白帯もあう。仁平さんには、この帯を見せて着物のイメージを掴んで貰ったからだ。


仁平と白洲、、、、『にへい と しらす』
何か和食、美味い食べ物の取り合わせのようで、今晩のお気に入りである。


●2010年08月01日(日)

染色家・仁平幸春氏


自分の仕事をどう評価して貰えているのか、それは小売店としての売上なのか、お客様のお言葉なのか、同業者の噂なのか。それぞれに意味があり、やはりどれも気になるものです。確かに売り上げが出来れば嬉しいし、お客様から、良かったよ!言われるのもさらに嬉しいし、なか志まやはあんな呉服屋らしいと、良い噂なら安心する。

着物の作家に自分の仕事を評価してもらうことは、稀というかまずない。
それは、まずは呉服屋と着物の作家という一般的な立場に依るからなのですが、
仁平氏には、聞いてみたかったのです。それはとても簡単な事なのですが、
『あなたの帯にこんな帯合わせはどうでしょう?』と。

(上の画像の他に、8種類の着尺を仁平氏の帯に合わせています。なか志まや的には、帯合わせがしやすく、使い回しの効く帯だなと感じました)

仁平氏からの言葉は、それはとても刺激的なものでした。

以下、仁平氏のブログから抜粋します。

こんな感じの「今までの和」を超えたシャープさとか
(逸脱ではなく新しい和のシャープさという意味)

染め屋の私のみでは出来ません。
これは、やはり着物を実際にお客さまへ提供し、着付けることをする人
さらにただそれだけではないもう一歩進んだ感覚と技術を持っている人
でなければ出来ないと思うところです。

例えるなら、中島氏は「不協和音の使い方が実にうまい人」といった
感じです。

ただ普通の3度の和音で調和、ではなく、そこに少し緊張感を与える。
それによって今まで気づかなかった着物と帯の関係性の魅力を表すことが
出来るわけです。

そして、その「麗しい緊張感」に
着る人、そして着る環境が関わります。

(人に緊張を強要するのではないが、普段使わない感覚を呼び覚ますような
 緊張感を産み出す)

その着物と帯にまつわる環境は動き出します。

中島氏は、そのような増幅をつくることが出来る方なんですね


これ以上、僕が望むものはない!と思えるくらいの言葉です。
そして、これはまだまだ到達した域のものでなく、これからの目標であると。
仁平さんが、僕の目指すものを敏感に感じ取ってくれて、それを抽出してくれたのだと考えています。なか志まやは、これが出来る可能性があるという、染色家からの投げ掛けです。ですから、僕もそれに、大きく応える、投げ返すことをせねばなりません。

自分なりの先染めの絹織物を追い求めて来た呉服屋人生の後半は
後染めをどれほど自分の物に出来るか!ということのように感じます。

それくらいのことを感じさせてくれる染色作家です。
この人の考えていること、そしてなにより彼が創る着物や帯や、様々な染色の作品をこれから、なか志まやでも紹介出来ればと強く願っています。


染色作家・仁平幸春 工房 dye works Foglia(ダイワークス・フォリア)
http://www.foglia.jp/ja/

仁平幸春の覚え書き/ブログ
http://blog.foglia.jp/