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『仕立て屋さんと呉服屋が一緒に展示会をする意味は』

『仕立て屋さんと呉服屋が一緒に展示会をする意味は』

キモノ・着物・呉服・染織の個展、その展示会の在り方は様々で、SNSの普及にも助けられ、その形態や場所も多岐にわたり、これは、お客様にとっても選択肢が増え、作り手にも近くなったりと、昭和以前の時代からは大きな変化が起きています。

元々、一衣舎さんは仕立て屋単独の個展を全国でやられて来ました。
『着物の仕立て屋の個展?』と何をと思われる方も多いと思いますが、日常着として着物をお召しになる着物愛好家には、とても魅力のある会でありました。

特に織物(木綿や絹、交織含む)の作家さんにとって、自分の作品へのアドバイスを求められる(糸の組み立て・織柄の位置などなど)場所としても、また、呉服屋である私が、中々出会うチャンスが無い織りの作家に出会えた場所でもありました。染織作家の志賀松和子さんの作品に出会えたのも、一衣舎さんの個展です。

何故、染織作家が仕立て屋に、意見やアドバイスを求めるのか、、、ここがとても重要なポイントです。この続きは、是非、一衣舎の木村幸夫先生に聞いてみて下さい。もちろん、私も、呉服屋の目から熱弁出来ますよ。

仕立て屋と呉服屋の二人展としてスタートしたのは、確か福岡だったように思います。その後、佐世保にも有田にも行きましたね。名古屋では、月日荘さんに最初はお世話になっていました。

呉服屋にとって、仕立て屋は、一つの職先になります。これはすごく一般的で、呉服屋をやっている方々にとって誰も同じ感覚です。

この感覚を、どういう感覚として、自分の仕事の中に位置付けるか?が呉服屋と職先という関係性の有り様決めてしまいます。これがなか志まやと一衣舎、呉服屋と仕立て屋が一緒に展示会するという事を成立させる、大きな要因になっています。

画像は、何年待ったかな〜。それを忘れてしまう程、色んな問屋さんに声を掛けていながら、中々手に入らなかった
染織作品です。本来なら、これで万々歳!画像のど真ん中に撮影してお知らせするのが普通だと思いますが、これは一つの『割合』のイメージ、この待ちに待った作品が、お客様にお召し頂くまでには、まだまだ多くの空欄がある、空欄とは、つまりは、この生地に対するアプローチは、一つでは無い、ではその他の選択肢は?裏地は?、そしてどういう仕立て方をするの?、日常着としての正しい寸法は?正しい採寸は出来ているの?そこからようやく、仕立て。

呉服屋は仕立て屋に、お客様を正確に認識(採寸のみならず)して頂くこと、これがまず重要で、その橋渡しが上手く出来ると、仕立て上がる着物はとても良い着物になる事を、何度も何度も経験しています。

呉服屋ならば、当然、合わせる帯は、小物は、襦袢はなどなどお勧めするのも、仕事なの当然です。それもこの画像の空欄になります。

ただ、二人展ではこの空欄を一気に埋めてしまおう、最良の提案を素早くお届けしよう、その最良の提案とは、着手のお客様にとっても、この染織作品にとっても、最善の事が出来るように、という呉服屋と仕立て屋の想いでもあります。これが二人展する意味だと、ずぅ〜と考えて来ました。

おそらく、多くの着物を愛してくれている方が、着付や寸法で悩まれていると事があると思います。しかし、着物のベテランになると、多少の寸法の前後、仕立ての良し悪し関係なく、サラリと自分の個性に合わせて、上手にお召しになれるのも、着物の不思議です。最初は呉服屋の言われるままだったけど、少し経験を積んでくると、色々と細かい所に気づきが出来て、あれは?これは?こうすれば?と不満を積もらせる方もいらっしゃいます。

どれもすごく分かります。分かっても、私一人でそれを解決は出来ません。仕立て屋の裁量で全て解決する訳でも
ありません。お客様の着付に対する熟練度も大きく影響します。

着物、染織、和装、どんな言い方でも構いませんが、日本人の女性が和服を着ている姿、現代の日常でのその姿、何気ない仕草、形、布の動きを、そしてその美しさを、呉服屋も仕立て屋も同じように愛しています。しかし、その愛し方にはやはり、個性が出るので、お客様には好き嫌いがあるのは当たり前ですので、この二人展が完璧とはとても言えませんが、ただ何々の作品があると言うだけではなく、その作品(布)を、どのように形にして、実際にお召し頂く為に、最善の方法は何か?を、お客様を目の前にしながら、お客様、仕立て屋、呉服屋の三人で考える場所として、短い期間ではありますが、年に数回、二人展を毎年継続しています。

日本人の体つきも、気候も大きな変化が現れて来ました。しかし、染織、呉服は、この幅の布です。確かに昔よりは巾は広くなりましたが、それでもほんの僅かのことです。ただ、この制限がめちゃくちゃある布の中に、無限の可能性を模索するのは、染織の作り手も、呉服屋も、仕立て屋も同じです。これは間違いなく、誰にも負けない位に持ち続けて行きたいと考えています。

どうかご縁のある方に、最高の和装をお届け出来きますように。