TOP お知らせ 店主日記 よく遊べ 店舗のご案内 気っ風市 お問い合わせ

ある日のなか志まやの出来事、つれづれ

2007年09月の店主日記
[過去の店主日記一覧]
●2007年09月20日(木)



『大理石宮殿は白い石で構築されていて、それはひんやりと冷たくそこにしんと
 存在する 水には建物が映り、空も映る』

 硬質な色彩を放ちながらも、肌触り、質感はとても柔らかく優しい。
 着物のどの場所に目をやっても、同じ表情はなく水面に写る景色のように
 揺れて動くようだ 

●2007年09月19日(水)

     織り上がりましたー!

 一衣舎さんに仮絵羽をしていただき、まずは吉田美保子さんご自身に着て頂き
柄の様子をみます!とてもとても、よい景色が顔の廻りに顕われます。全体としてみると肩から裾までどれ一つとして同じ表情は見えず、友禅のような厳密な絵羽の繋がりではなくて、偶然そこに居合わせた妙というか縁というかそういう絵羽の繋がりです。

●2007年09月15日(土)

       袖と衿

 絵羽着尺の姿が見え始じめています。金太郎飴の着尺と違い
 そこにあるべきして緯糸が織り込まれています。イメージでのコンセンサスは
 十分に取ってあるのですが、細かい処はすべて吉田さん任せです。
 定められた着物のその場所に来た時に、彼女が感じた糸が織り込まれて
 柄となっていきます。
 衿の処は清々しく透明感に溢れ、袖には水辺の模様が見えるようです。

●2007年09月14日(金)

     
 自分が発注している着物が機に掛かっているのを見る機会は、こんなに長い呉服屋のキャリアでもそうないものです。だいたい自分の性格上、こういう姿はあまり
見てはいけない(笑)ように思ってしまうのです。
 はっきりいって『邪魔をしてないかな・・・』などと考えてしまいます。
昔、バーテンダーをしていた頃、他のお店に飲みに行かせて頂いた時、先輩バーテンダーがシェイカーを降り始めると、そちらを見ないようにようにしていました。
( 湯島、ESTの渡辺さん )・・・とは少し違う気もしますが、特にものを創っている人に対する自分の姿勢というのには昔から敏感だったように思います。それと
同じバーテンダーでありながら、僕はパフォーマーであったの対し、渡辺さんは職人でありました。どんな職業に付こうとこのような構図を崩れないであろうな!と変に納得してしまいました。

 そして、今は自分がオーダーしたものが形になっていく・・・織り着物の面白さを丁寧に追わせて頂いています。そしてその出来上がったものから、どんな着姿を演出して行くか!に取り組みます。

●2007年09月13日(木)

    身頃の決定!

 吉田さんが考えてくれた配置に決定ラインを入れていく。
 僕は、随分偉そうだ・・・
 絵羽といえばここがまず一番のポイントになる それは昔も
 そして今も、僕もまだ変らない

 超えられない決まりがあるように思えるし、これが着物の絵羽としての
 最高の見せ場であり山場なんだろうな それに決定ラインをいれるとは
 やはり偉そうだ。

 大理石宮殿は白い石で構築されていて、それはひんやりと冷たくそこにしんと
 存在する 水には建物が映り、空も映る 

 そういう線が描かれているだろうか。

●2007年09月12日(水)

     後身頃の織り始め

 糸が交差し密度を増して、一本づつで織りなされていく。必然に打ち込まれていくのだけれど、徐々に姿を見せる柄はまるで意味もなくランダムに、そこにあるように見える。すべてのパーツが繋がって着物の形になっても、絶対的に寸分違わずそこに柄が或る必要がないけれど、自由な繋がりをみせる絵羽の着物。

 褻(け)という単調な日常に、違うリズムを持たせ彩りを感じさせ、すこしの規律と緊張感を込めるということが、今の晴れか。

●2007年09月09日(日)

     糸 糸 糸

 杼(ひ)を17本つまりは17種類の糸を織り込んでいきます。
太い糸、二本取りした糸、すっきりした糸・・・色んな糸達が
くちなしで10色、藍染め一色、墨染め2色、かすり糸を2色・・・

     糸 糸 糸     

●2007年09月08日(土)

    『ロールじゃなくて、パーツで捉える!』

 着尺はロールで金太郎飴なのですが、絵羽は一反の中で柄の与えられる役割は決まって来ます。織りながら着物全体の構造を考えてもらっています。そのまえに
イメージというものが確かにあって、今回は・・・『大理石宮殿』

 以下は吉田さんのブログより抜粋

着尺の衿を織る。今回は絵羽だから、着物の構造をバラバラにして、ロールじゃなくて、パーツで捉える。
今回のイメージのより所は、インドの白大理石の宮殿。白い石はひんやりと冷たく、そこにしんと存在する。水に建物が映る。空も映る。
着尺を構築物として捉える。建造物と似た所もあるはずだ。コンストラクトしていく感じ。


絵羽の着尺って、織りながら、そこがどこなのか、しっかり把握できるのが面白い。今やってるのは、下前になるパーツ。スタートは右の後ろ身頃。ちょっと余分があって、はい、ここが裾、ふくらはぎの後ろあたり、ここらが膝の裏、しわが寄るとこ。腿からお尻、体重がかかる部分。かつ帯のタレで隠れる。それからオハショリで畳まれるトコ。タイコがバーーンと来る。この辺りは肩甲骨か。袖とくっつく。肩山が近づき、衿が登場。折り返されて、はい、前に来ました。鎖骨からその下三寸くらい結構アイキャッチよね。衽下がり(おくみさがり)で衽と合体。それからまた帯やオハショリで見えなくなって、、、、、
むーむーむー、着物はやっぱり立体だー!よーくよーく解った!


 吉田さんのお人柄がこの文章からも分かって頂けると思います。
世に存在する絵羽の織物と同じであってはならないのです。そこに蚕、いや桑の栽培から始まってここに至るまでのいくつもの想いを織りなして欲しいと思います。
そして、それはどの段階でも、ただ『いいものを創りたい!』という願いが常にあるということが先ずは一番大切ですし、この絵羽着物にもあるように思えます。

 画像は、絣糸の入り具合をチェック中

そして、着物の柄は、格式とかを表す一つの記号として役目があるのだけれど
僕は、一番の目的というのが
『着物の絵柄で一番重要なことは、その柄が女性の体型の補正をすること!』
誤解を招く表現であるかもしれないけど、洋服でも着物でも、とにかく
色と柄というものは、女性を美しくみせるためのもの であると考えます。
小紋や、特に訪問着などではこういった考え方が優先されるべきです。

 ですから、織り柄であっても少しでも女性の体型が美しく映えるような柄の入り方であって欲しいと思います。(て、書きましたがすごく当たり前のことですよねw)
とにかく、これを着たらとにかく『いい女!』になって頂きたい!その一念で吉田さんにお願いしています。

 そして、ぼくの着物は、総てそういう観点から選んでいます。

●2007年09月07日(金)

       機に掛かった経て糸

 このところ縁のある茨木県の水谷ルリ子さんから、吉田さんのところに来た糸。
『草木染めにもよく、手織にもよい!』吉田さんの説明には、この糸に対する熱い想いがとても感じられました。
 『白い紬』というのが、一番最初のテーマだったので、この経糸を含め、10段階で糸のグラデーションを染めていただいてます。染料は『くちなし』です。
モノトーンのグラデーションに、本当に弱い僕にはとてもストライクな色出しでした。

●2007年09月06日(木)

    経糸(たていと)

 茨木県鹿島の水谷ルリ子さんの糸である。
商売ではなく純粋に生糸をつくってみたいという水谷さんの情熱は、桑さえも自らの手で育て与え、繭をつくり座繰りで糸をとる。八丁撚糸という原始的なやり方は、今のように糸を撚るのに油をつかわず、水を使いゆるやかに糸に負担をかけず大切に作られた糸である。また精錬(アルカリで炊いて、糸のタンパク質を落として柔らかくする作業)も、藁(わら)の灰でしているというのである。

 そんな貴重な糸を生かしてくれる人を水谷さんは探していた。そして、ついには
吉田美保子さんの処へ、お嬢様の運転でいらしてこの『糸』を吉田さんに託されたらしい・・・そんな物語がある『糸』がこの『吉田美保子の絵羽着尺』骨格をなす
経糸に使われている。

 水谷さんはご高齢の為、糸つくりをやめられていて、現在、吉田さんがあと僅かこの糸を所有されているだけである。そんな貴重な糸をこの着物の為に使って頂き、本当に感謝しています。

●2007年09月05日(水)

          糸

 夏の始めに、打合せをしてイメージを固めていた『吉田美保子の絵羽着尺』
袖と衿が織り上がったと連絡が入り工房にお邪魔しました。

 出迎えてくれたのは、この糸達!
 糸て綺麗だなー。

 白い絵羽の着物、褻(け)着の中で晴着のようにも装える着物

この段階に至るまでに、吉田さんはミニチュアの織りプランを幾通りも見せてくれてそして、着物全体のイメージを固めた一枚の写真を持って来てくれていました。
『タージマハルの大理石宮殿』
これを見せられて、そう大理石!鉱物的な美しさはとてもセクシーでいながら
高貴さと格調も感じます! そしてこのニュートラルな色の感覚が

『現代的 クール 硬質
それでいて艶っぽい 時に豪奢 時に悪党 時に妖艶  そんな着姿』 と

なか志まやのテーマとなる着物姿を、見事に具現化してくれると思いました。
この糸の光沢感をみたとき、僕は織り上がる着物がとても澄んだものになると
想像しましたし、吉田さんはさらに、僕以上のイメージを膨らませて
染めと織りに臨まれていました。

つづく


 

●2007年09月04日(火)

         糸 と 吉田美保子さん

  糸の掛かった機を前にして・・・経糸がなんと美しいこと・・・



   吉田美保子(よしだみほこ)
染織家。1993年から織りを始め、2003年に独立、専業作家へ。手でひいた生命力のある絹糸を植物染料で染め、現代的な感覚の着尺や帯、ショール等を手織する。「心を解放して織る。法に従って織る。この両方を同時に実現する」というのが信条。2004年より木村幸夫氏主催「一衣舎展」に出品し、高い評価を得ている。