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ある日のなか志まやの出来事、つれづれ

2008年04月の店主日記
[過去の店主日記一覧]
●2008年04月30日(水)

    『The 澁澤』 つれづれ3

 Rumixの芝崎るみから第2稿のデザイン画がメールで送られて来て一週間になる。
近しい人からアイディアを頂き、彼女にプラスのモチーフをメールする。
澁澤龍彦は、僕にとっては凄く曖昧な存在である。彼の大まかな人生スタイルは、全くもって共感出来るものであるけど、細かい処では共鳴出来難いというか、何がよいのか、理解し難い部分もある。彼の人生や作品をすべてなぞった訳でもなく、僕の捉え方はある種、ファッションだと感じる。
 思えば『緊縛』という題材も一昔前ならアンダーグランドな嗜好とされていたが、今ではかなり認知され、多くの方の嗜みとなっている。ファッションといっていい(たぶん)

 澁澤龍彦が世に示したものはなにか!僕にはまだまだ何も理解出来ていない。
いくら年月をかけてもこの凡人には、到底理解出来ないものだと想像がつく。
が、ここに一つのオマージュを存在させようとしている。それは、自分が足をつけているこの平易な日常に、少し毒を盛る感じだ。自ら望んである種の痺れを促すような
そんなテーマだと思う。
 『The 澁澤』浴衣 乞うご期待!とは言えない。 がものすごいデザインだ。
ドクロなど真似が横行したこの浴衣の世界に、絶対に他の追従、または模倣を許さないテーマとデザインだと信じる。

●2008年04月24日(木)

     企画を進めているもの・・・

 12年ぶりなか志まやオリジナル帯締めの進み具合の報告と、今夏のオリジナル浴衣のデザイン画の第2稿が午前中に届き、吉田美保子さんによる織の着物2点の打合せを続けてして方向性を決めた。
 帯締めは、12年前のものを復刻しようとするものであり、今年のなか志まやの浴衣は、より私的で掴みどころが難しいテーマを取り上げている。吉田美保子さんの新作は原始的というか、宇宙的というか描写することが困難な自然の色を求めて織り上げるものになると思う。
 どれも記憶に残る感覚を復元したり、色付けしたり、探り当てようとする作業のようだ。
一本のサンプルが組み上がり、一枚のデザインが送られて来て、布地のコンセンサスを作り、それを売らなきゃいけない呉服屋は、創り手に負けない思想を持って熱く語れる売り手にならなきゃいけないのだと思う。


●2008年04月23日(水)

     京都

今年に入り5度目の京都、すこし時間に余裕があって
 高台寺から清水寺へ歩く。
 桜も散り、紅葉もない春の東山の美しさに心打たれてきました。
 この画像では表現できない自然の広がりをみて
 いま、仕立てを控えている訪問着の美しさて
 この目の前にある感覚をどこかで切り取ってトリミングする作業なんだな
 と感じました。この景色を写真にしたい、絵にしたい、着物にしたいという
 人だけが持ち得た高度な感性を、少しでも表現できることを
 仕事にできたのは、至極幸せなことだと思います。
 同行した尊敬するデザイナーも、おお!と声をあげていたこの自然の美しさ。
 単純ですが、なんと言われようとも素直に美しいと思える自然。
 30年ぶりに見た風景です。

 追記:京都の一流の料理人はどういう仕事をしているのか。まだまだよくは
    知りませんが、今までの人生で多分これが一番おいしい海老フライだ!
    と言わせる洋食屋に出会えました。カウンターだけの店、気軽に人には
    教えたくない、有名になってほしくない、次の京都では必ず
    新しいメニューを食べたいそんな店です。先代を継いだ若いシェフの
    仕事にたいする姿勢も気にいりました!素晴らしい!感動した!

●2008年04月07日(月)

           総刺繍訪問着


 絵羽全体に、密に施された刺繍ものがなか志まやは案外好きであります
シンプルな服地テイストな着物ばかりだと思われがちですが、バブルの頃に呉服屋で修行したせいもあり、重厚な友禅や絞り、刺繍の着物を数多く目にしてきました。
久保田一竹の辻が花という着物はその最たるものかもしれません。

 そういえば、思い起こせば、なか志まやでの最高高額商品はなんだったか?
あれは確か独立して2年目、ちょうど『ワーズワースの庭で』という番組で着物特集の企画・撮影の手伝いをしていた頃、無形文化財指定の絵羽結城紬。恐ろしい額でした(笑)もうそういう着物を扱うこともないでしょう。

 縁とは不思議なもので、呉服屋修業時代に高額な帯としてよく売れた螺鈿の帯。
この刺繍の訪問着をなか志まやが提案することを予測していたかのごとく、丹後からやって来ました。その帯は、2月に青山スパイラルで行われた丹後の生地フェスタで
これはおもしろいな!と目にしていたものです。

 着るものを表現する素材もそのデザインも、衣装の歴史という螺旋(らせん=スパイラル)の中に取り込まれていて、少しでも長く生きていたら、また掘り起こし、再発見をして新しい変化を感じて表現していくものだなと思いました。

 着物にメタリックな素材感が欲しいとか、鉱物的な光沢感が欲しいとか、そんなめちゃくちゃな感覚も、過去に積み重ねられた素材の表現方法の中に案外その答えがあったりするのです。